研究方針

当研究室では、多くの要素が強く相互作用、相互依存することにより生起する複雑多様な現象の数理統一的な理解と情報処理への応用を目的としています。
例えば、脳のモデルとしてのニューラルネットやガラス形成、分子モーター・熱雑音による拡散や化学反応、共通の情報を持つ参加者によるゲームや価格変動、多変数関数の最小値問題(最適化問題)等は表面上の、あるいは歴史上の極端な違いにもかかわらず、多くの点で共通の困難さ、面白さを抱えておりこれらの多岐にわたる問題の基礎部分を解明することが本分野における主な問題意識です。またこれらの多体問題を、(非)平衡統計物理学、計算機実験、確率過程 論、力学系理論、カオス理論等を用いて解析しています。これまで統計力学は主として物理系や化学系等物質の性質の究明に広く応用されてきましたが、その数理的簡明さ、一般性のため現在では情報処理を含む工学や生物系などの非物質的な世界にもその応用範囲を広げています。多くのユニットとそれらの間の(簡単な)相互作用が統計理論を用いる際の基本的な要件であり、この条件のもとで生起するじつに複雑な現象やダイナミクスの解析に重要な役割を果たしています。計算機実験や力学系(カオス)の理論も我々の研究を支援するものとして欠かせないものになっています。

カオス(原始根)符号IQ平面上の軌跡
Chaos-01.tifP=173, q=2

研究対象例

非線形多体系の統計動力学

私達の身の回りには、水やタンパク質のようにある状況下で突如その性質を大きく変化させる集団(体系)が多数存在している。統計物理を用いると、性質の変化をその構成要素構成要素の簡単なモデルで考えることによって説明できる。

確率過程

確率過程とは、時間関数 Y(t) が確率的にしか決まらない過程のことである。ザリガニの尾の毛が水流の揺らぎの中の特定の信号を感知する、といった生物の機能にもこの確率過程を用いた解析が行なわれている。

経済・社会の数理

近年の情報伝達技術の発達によって、世界中の商品やサービスの価格や取引に関して豊富なデータが利用できるようになってきています。ストックとしての社会的資産の地域分布や、フローとしての物、金、人の流れさえも世界スケールでデータ化されるようになっています。しかしながら、これら人間の経済・社会的活動から生み出されるデータ量は膨大であり、人間の情報処理能力を超越したものとなっています。このような豊富なデータを収集・蓄積・分析するためには、コンピュータによる自動化と、この自動化を実現するための数理的な構造(アルゴリズム)が特に重要となります。人間の経済・社会活動から生み出される膨大な情報を用いて、我々の社会の状態を網羅的観点から知ることが情報伝達技術の発達した近年における課題となっています。この問題に向かって、情報と物理の両方の視座から、確率過程・コンピュータシミュレーション・データ分析の各技術を用いることで、データに基づいた計量・可視化・推定・予測に関する研究を行っています。

外国為替市場の定量分析
外国為替市場の定量分析.tiff

研究内容

梅野健 教授(→詳細ページへ

カオスと計算
応用カオス
脳のカオスの機能的役割の構成論的証明
脳型信号処理
情報の基礎
統計力学
エルゴード理論
数論とカオス
確率論とカオス

ハミルトン力学系とカオス
標準時決定アルゴリズム
時空認証システムとサイエンス・クラウド
複雑コミュニケーションサイエンス
情報セキュリティ・暗号理論
多点センシング
カオス経済学の基礎の構築―決定論的カオスに基づく経済学およびファイナンス理論

五十嵐顕人 准教授(→詳細ページへ

スケールフリー.tifスケールフリー確率共鳴
分子モーター
確率過程理論を用いた多要素系の研究
非線形格子のダイナミクス
複雑ネットワークの構造とその性質



スモールワールド.tifスモールワールド

佐藤彰洋 助教(→詳細ページへ

ホテル予約データ_グラフ.jpg経済物理学
カオス法によるq-Gauss分布に従う乱数の生成アルゴリズム
旅客機の価格分析
宿泊施設の時空間分析
外国為替市場の構造分析
ランダム乗算過程
価格変動モデル
べきノイズ発生回路

ホテル予約データ_日本地図.jpg
国内の利用可能ホテル分布と価格ヒストグラム